遺言書の入った封筒を開けてはいけない [遺言書]
Aの夫が亡くなり半年が過ぎた。
葬式も終わり、親族へのお返しも済ませた。
やっと、ゆっくりできるとAは考えていた。
これまでは親戚や近所の人たちへの対応で忙しい毎日を過ごしてきた。
身体的にも精神的にも疲れがたまっている。
ただ、それも一通りの手続きも済み、少しほっとしているところである。
「これから、少しずつ夫の持ち物を整理しなければ」
一人になった自宅で、言ってみる。
もちろん返事はない。
少しさびしい気持ちになったが、まだまだ自分にしなければならないことがあることがAを元気にさせた。
気が張っているという表現が適切なのかもしれない。
その日から、毎日少しずつ遺品の整理を始めた。
いろいろなものを分け、一部は捨ててしまうことにした。
いつのものだか分からない書類やものがたくさんある。
どうしてこんなものを・・
そう思いながら、夫の遺品整理は思い出を探しているようで、楽しくもあった。
そんな整理を始めて3日目、見たこともない封筒をみつけた。
封筒には表に「遺言書」と書かれ、封がされている。
「遺言書?」
Aは驚き、思わず声に出した。
というのも、Aはそのことを一切夫から聞いていなかったからだ。
夫は財産として、不動産や預金を残していった。
子供は3人いる。
相続財産の分け方が書いてあるのだろう。
そうAは想像した。
Aは遺言書の内容が気になった。
私も知らないところで夫が書いた遺言書。
どんなことが書いてあるのだろう?
財産の分け方を知ることで、子供や私のことをどう考えているのか分かる気がした。
普段あまりしゃべる方でなかった夫はどんなことを考えていたのだろう。
早く知りたい。
そう思い、思わずAは遺言書と書かれた封筒を開けてしまった・・・・
そして、その中には・・・
つづく(かも?)
少し長くなりました(^_^;)
偶然、見つかった遺言書を相続人の一人が開けてしまう。
そういうことって、ありえますよね。
しかし、法律上は無断で遺言書の入った封筒を開けてはいけないことになっています。
家庭裁判所で、他の相続人の立会いの下、開封しなければなりません。(民法1004条3項)
したがって、どんなに気になってもAさんのように勝手に開けてはいけません。
開けたくなるのは分かります。
しかし、一人で開けたことで、何か不正が行われる可能性があることを法律は心配しているのだと思います。
例えば、自分の不利なことが書いてあると捨ててしまう人もいるかもしれません。
そのようなことを防止するのが、この規定です。
あとあと自分が不利な状況に陥らないため、遺言書は家庭裁判所で開ける必要があると思います。
なお、勝手に開けた場合遺言書自体は無効にはなりません。
しかし、過料5万円以下に処せられる場合がありますのでご注意ください。
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